朝、広島の町を歩いていると、遠くから「カン、カン」と鉄を打つ音が聞こえてきます。
あの音を聞くと、不思議と心が落ち着くんです。
それは、子どものころから変わらない、私にとって“町の音”のひとつ。
そう、鉄工所の音です。
鉄工所というと、男性の職場というイメージがあるかもしれませんが、広島では昔から、地域の生活を支える大切な存在。
ビルの骨組み、橋、フェンス、手すり、あらゆるところに“鉄工の手仕事”が息づいています。
見えないところで働いている人たちがいるから、私たちの日常は安全で、便利で、そして美しいのだと思います。
広島の空と、鉄の輝き
広島の空は、瀬戸内の光に包まれています。
その光が鉄の表面に反射して、まるで生き物のように輝く瞬間があります。
鉄工所の前を通ると、鉄の匂いと油の香りがふっと漂ってきて、なぜか懐かしい気持ちになる。
職人さんたちは、その光と音と匂いの中で、毎日黙々と鉄と向き合っています。
鉄って、冷たいようで温かい。
たとえば、町の手すりを握ったとき、そこに職人の手の跡がある。
その一つひとつが誰かの手仕事であり、暮らしを支える力なんですよね。
広島の鉄工所には、そんな“人の温もり”が詰まっているように感じます。
鉄工所がつくる、暮らしの安心
私は以前、近所の鉄工所で働く奥さんとお話をしたことがあります。
「うちの人はね、毎日油にまみれてるけど、鉄を曲げるときの目がすごく真剣なんよ」
その言葉に、ちょっと胸が熱くなりました。
鉄を扱う仕事って、見た目以上に繊細で、根気がいるもの。
でも、誰かのために、町のために――そんな気持ちで鉄を打つ姿には、確かな誇りがあるのだと思います。
鉄工所の音が響く町は、元気です。
その音は、今日もどこかで“暮らしの鼓動”として響いています。
広島の鉄工所と、未来へ続く手仕事
時代が変わっても、ものづくりの原点は変わらない。
鉄工所の現場には、古い道具と新しい技術が混ざり合いながら、確かな手仕事が受け継がれています。
私はその音を聞くたびに、「広島っていい町だな」と思うんです。
便利さばかりを求める時代だからこそ、手を動かし、汗を流して形をつくる人たちの存在が、いっそう輝いて見えます。
今日もまた、鉄を打つ音が広島の町に響いています。
そのリズムは、まるで心臓の鼓動のように――確かに、生きている音です。
